人生100年時代の社会人基礎力が身につく「越境体験」の価値とは?

HRコラム

人生100年時代の社会人基礎力が身につく「越境体験」の価値とは?

以下は、2018年7月27日に開催された「人生100年時代を切り拓く!社会人基礎力をつけるための「越境体験」の価値とは?」というセミナーについて、越境体験に関する部分でなされた話の要約になります。

(内容)
1.越境とは何か?
2.リフレクションとは何か?
3.越境学習の課題

推計によると、今年(平成30年)生まれた人は109歳まで生きるというデータがあります。これを基に、現在は「人生100年時代」と言われています。100年生きるこの時代に、どういう力が必要か。どういう経験をしていくべきなのか。これが今回の内容となります。

1.越境とは何か?

越境(えっきょう)とは、企業の中から外へ出ることを指します。あるいはもっと分かりやすく言えば、自分がホームと認識しているところからアウェイと認識するところへ行くことを意味します。アウェイへ行くと、普段会わない人と会って学ぶことができます。行ったきりではなく、アウェイの話をホームで話したり、ホームの話をアウェイで話すといった「往還(おうかん)」を繰り返すことで、自分の成長に役立てることができます。

越境と言っても、必ずしも転職や副業を意味するものではありません。兼業や副業などは「有給ワーク」と呼ばれ、その他ボランティアやNPOなどの「ギフトワーク」、家事育児などの「家庭ワーク」、社会人大学での学び直しといった「学習ワーク」といったものがあります。これらを並行して複数行っている人を「ポートフォリオワーカー」と呼び、それぞれすべてが越境体験となります。

このような複数のワークを並行して経験すること(パラレルキャリア)の効果ですが、主なものとして以下の4点を挙げることができます。
1.シェアド・リーダーシップ(小さなリーダーシップを経験できる)
2.多様性と曖昧さに慣れることができる
3.ゼロベースで実験を繰り返し、失敗を歓迎できるようになる
4.自分の暗黙の前提を常に見直せる(異質性の体験、視野の拡大)
これらをまとめると、越境体験の重要な要素として、「上下関係のなさ」、「異質性」、「抽象度」といったものを挙げることができます。こういった体験を通じて自分を成長させられるのが、越境体験やパラレルキャリアといったものの価値と言えます。

政府が越境体験やパラレルキャリアに注目する理由としては、「働く」ことと「学ぶ」ことの二つが大きく変化していることを挙げられます。

2.リフレクションとは何か?

リフレクションとは、自分のキャリアをしっかり振り返り過去や未来に対して内省をすることです。社会に出た後で自分のキャリアについて時間を取ってゆっくりと振り返ったことがあるという人は3割にも満たないという調査結果があります。キャリアオーナーシップを持つ上で、リフレクションはとても大切なことです。

このリフレクションを行うきっかけとして、副業を検討するということは一つの選択肢だと言えます。実際に副業を考えさせる研修が企業においてなされた時、意外なことに50代60代の管理職からの評価が一番高かったという結果があります。通常は50代に入ってからセカンドキャリアを考えますが、これでは少し遅く、早い段階で自分のスキルセットや本当にやりたいことを考えるのに、副業を考えることが非常に役立ったという強い思いがあったからです。

副業を始めとする越境体験をすることで、自分は何ができて何ができないのか、どのような強みと弱みを持っているのかといった振り返りをしっかりと行うことができ、自分に対する理解を深めることができます。

3.越境学習の課題

実際に越境学習を行おうとした時、主なものとして現在は以下三つの課題が挙げられます。

1.「小さな一歩の踏み出し方」が分からない
2.ホームでアウェイの話をすると「迫害」される
3.やる気を出したけど、ホームで過ごすうちにやる気が「風化」してしまう

100年生きると考えた時、これらの課題によって越境学習を行えなかった場合、新しいスキルやAIなどがどんどん出てくる今の時代においては大きなリスクとなります。経済産業省では、これらを踏まえて「社会人基礎力」というものに関して今年再定義を行い、企業へ働きかけを行っていくとともに、社会人基礎力の普及に努めていきます。

※となりの研修室の記事は、現在 「Edu研」へと引き継がれております。