公益財団法人東京しごと財団について
東京都千代田区にある公益財団法人東京しごと財団(以下、東京しごと財団)は、高齢者が経験や能力を活かして地域で働くことを通じて社会参加を図るシルバー人材センター事業、東京都内で就労を希望する全年齢層の方を対象にきめ細かなカウンセリング等による就業支援サービスを提供する東京都しごとセンター事業、障害者の職業的自立を促進する障害者就業支援事業、事業主に対する人材の確保・育成及び雇用環境の整備等の支援に関する事業等を実施し、高齢者・障害者を含む幅広い都民を対象とした雇用・就業施策を推進する法人です。
東京都内で働く意欲を持つ方のために、その経験や能力を生かした雇用・就業を支援するとともに、東京の産業の振興に必要な人材の育成を図ることにより、豊かな職業生活の実現と活力ある地域社会づくりに寄与することを目的として幅広い事業を行っています。
この記事は東京しごと財団総務課長の富永様に、東京しごと財団で若手職員向けに実際に行われている研修の具体的な中身や、社員のキャリアアップに対してどのように考え、そのサポートを行っているのかについてインタビューした内容をまとめたものです。
1.入社後の研修内容について教えてください
4月に入職すると、まず8日間の新入職員研修があります。そこで東京しごと財団の役割や事業の概要、仕事の進め方や情報セキュリティに関する知識など、職員の基礎として必要なものを伝えています。一般的な接遇などは外部の講師や研修機関を活用し、実際の業務に関する部分は財団職員が講師となります。
最初の新入職員研修終了後は、それぞれの職場でOJTを受けながら業務にあたりますが、3ヶ月後の7月に再度全員を集めてフォローアップ研修を実施しています。これは入職して3ヶ月間働いた上での成功事例や失敗事例、その原因分析や改善提案について同期で共有し、議論する場です。自らの業務を同期とともに振り返ることで、客観的に仕事の進め方を認識出来るほか、同期からのアドバイスやそれぞれの状況を聞くことで刺激にもなりますし、一緒に頑張っている仲間と親交を深められることも大切なことだと考えています。
さらに3ヶ月後の10月に、2回目のフォローアップ研修を行います。これも、前回の反省点を踏まえて何が出来たかをもう一度振り返り、PDCAを回しています。新入職員と一口に言っても社会人経験があり転職して入職した職員と、職歴のない新卒の職員がおり、新卒であれば足りない経験を補う目的で、下半期に外部機関の研修にも参加しています。
2.新入職員研修以外のキャリアに対するサポートを教えてください。
新入職員研修のほか、研修については様々なメニューがあります。職層が上がるごとに必要な役割やスキルについて習得するための職層別研修を始め、就業支援に関する法的知識やそれぞれの事業の実施にあたり必要な知識を身につける実務研修など、研修のメニューは充実していると思います。
一例として、入職して2年目の職員に対して社会経済事情研修という全6回の研修も行っています。東京しごと財団は東京都や国から仕事をいただいて実施する事業がほとんどなのですが、そのためには東京都や国の施策の動向を把握し、社会の動きやその中で求められる財団の役割などをしっかり理解する必要があります。実際に研修を受けた職員からは、「自分の業務しか見えていなかったが視野が大きく広がり、仕事へさらなるやりがいを持てた」といった声も上がっています。
そのほか、資格取得の支援もあります。研修として行っているものもあり、例えば、東京しごと財団は就業支援を行っていますので、「キャリアコンサルタント」という国家資格取得に向けた研修も行っています。ただそのような資格に限らず、本人が希望して資格を取得する際には、上限はありますが受験料を全額、講座を受講する場合はその半額を支援するという制度を設けています。対象となる資格は特に限定はしておらず、仕事に関係するもので、上司の許可があれば広く認められます。例えば、広報の担当者で「PRプランナーの資格を取りたい」という声があり、そのような本人が希望するキャリアアップを支援しています。
実際に資格取得支援の制度を使った職員からは、「目安となる到達点が明確で頑張る意欲につながるので、取得を目指して良かった」といった声をよく聞きます。他にも「業務でなんとなく知っていた知識を体系的に勉強できた」、「講座に通うことで職場以外の違う場所で仕事に関わる話を聞き、仕事への意欲が増した」といった声もあります。資格取得や講座で得た知識が実務に活かせれば、業績が上がり給与に反映されることもあるので、職員自身が望むキャリアアップに向けて制度を十二分に活用してほしいと思っています。
3.働き方の面で、積極的に取り組んでいることがあれば教えてください。
働きやすい職場作りに向け、職員の声を聞きながら働き方改革は実践しています。もともと入職を希望する人に女性の割合が多く、財団の正規職員の構成比では約7割が女性です。監督職の構成比もこれに近い数値で、つまりは女性だから昇任しにくいということはありません。子育て中の係長もいますし、男女に関係なく能力を正当に評価してそのままキャリアアップしていける組織風土があります。
また、女性が働きやすい職場であるということは、男性も働きやすい職場であり、男性も育児休業や看護休暇を取る方も自然にいますし、女性が多いからか、育児等との両立については家庭の状況を周囲に理解してもらいやすく、背中を押して応援してもらえる、という男性職員の声も聞きます。
制度について具体的に紹介しますと、産休は法律で14週間とされているところを、東京しごと財団では16週間としていて、その期間は通常の給与が出ます。また育休は最大で3年間、子供が3歳になるまで取得することができ、その期間は雇用保険の育児休業給付金を受け取ることができます。結婚や出産によって積み上げたキャリアがなくなってしまうことを不安に思う女性もいますが、東京しごと財団では育休後に職場復帰をしなかった職員は、平成16年の東京しごと財団設立以降、1人もいません。
女性が多い理由については、公的で社会貢献度が高いという部分で、東京しごと財団の仕事内容に魅力を感じる人が女性に多いのかなと思います。他にも「しごと財団」という名前から「仕事と家庭を両立できるのだろう」といったポジティブなイメージを持って応募されてくる方もいらっしゃるかもしれません。実際に、東京しごと財団では女性の活躍推進や働き方改革を都内企業に広げていく事業も展開していますので、当然自分達もそのような組織風土でなければいけないという思いはあり、働きやすい環境づくりという点では積極的に行っています。
4.キャリア支援に関する今後の取り組みについて教えてください。
今年度中に、職員の研修プランを策定する予定です。この4~5年で組織規模が拡大し、採用する職員数がかなり増えており、現在は入職して暦の浅い職員の割合が増えてきました。そのため、不足している監督職を担える人間や、リーダーとして組織をけん引できる人材の育成が急務だと考えています。
既存の研修に加え、トップの声が直接職員へと浸透していく場も新たに作りたいと考えています。現在企画しているのは、トップマネジメント層から財団の経営について直接聞く機会を設け、これまでの経営目標やそれに対する評価、今後の経営改革プラン等、財団の経営に関して職員の理解を深められるような機会を設ける予定です。
また制度的な面では、昇任の間隔を短くする変更を行いました。昇任については試験があるのですが、試験を受けられる基準となる職歴が決められているため、昇任には一定の勤続年数が必ず求められます。ただこの年数を数年前から下げており、現在は昔よりも昇任の間隔が短く、能力があればより昇任しやすい仕組みに変わってきています。
東京しごと財団としても、組織力を強化するためには、優秀な人材は早く昇任し、職責を担ってもらう必要もありますので、働きやすい環境を整える一方で積極的にキャリアアップの支援を行い、引き続き職員の活躍を支援していくことができればと考えています。
※となりの研修室の記事は、現在 「Edu研」へと引き継がれております。